1977年に東大不合格だった「開成」の神童は、大人になってどうなったのか? 名門校の神童たちは「すごい人」?「ただの人」? – 小林 哲夫 – BLOGOS

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 開成高校が東京大合格者数で初めて1位になったのが、1977年のことである。124人を数えた。以降、多数の東大生を世に送り続けてきた。1982年から今日まで36年間、東京大合格者数連続1位を記録し、「神童大量生産」校の役割を担っている(以下、人名の後のカッコ内は卒業年)。

 開成にとって記念すべき1977年に、合格がかなわなかった同校出身の政治家がいた。岸田文雄(1976年)。第2次安倍晋三政権で外務大臣を務め、現在は政調会長の任にある、ポスト安倍の最有力議員でもある。

岸田文雄氏 ©雑誌協会代表

 岸田は1957年生まれ。1年浪人したのち、早稲田大法学部に進んだ。大学卒業後、銀行員を経て、1993年に初当選した。安倍総理と同期である。岸田は何ごとにもソツなく仕事をこなしてきた。ハデなパフォーマンスもなく、いたって堅実な政治家だ。

岸田の答弁の手堅さは永田町随一だ

 地元後援会が発行する冊子では、岸田はこう描かれている。

「また岸田の答弁の手堅さは永田町随一だ。記者に『最も失言しない政治家は誰か』と問うと多くの記者が岸田の名を挙げる」(「FK翔」2014年)。

 それゆえ、永田町では信頼が厚く、いまや総裁選出馬が取りざたされている。本人はまんざらでもないようだが、沈黙を保ったままだ。野田聖子ほどの大胆さはない。かつて派閥の親分、加藤紘一の「加藤の乱」を目の当たりにしたからだろうか。思い切った行動は禁物という、加藤を反面教師とする姿勢によって、地味という印象をばらまいているフシがある。コメントは官僚的でおもしろみがない。記者泣かせである。

開成中学校・高等学校 ©文藝春秋

 メディアからも、こんな風にからかわれてしまった。

「話のつまらなさには定評があり、取材した記者の誰もが音を上げる。派閥パーティーの打ち上げの際、女性秘書たちが『岸田さんと同じテーブルになると会話が続かない』とこぼしていたこともありました」(「週刊文春」 2017年8月10日号)

 岸田は銀行出身らしくきめ細かな配慮ができ、大きなミスをしない。官僚出身政治家のような職能を身に付けている。

 じつは開成出身国会議員には官僚経由が多く見られる。おもな議員を並べてみよう(いずれも衆議院)。

「開成」議員には、官僚出身ゆえの地味さがついてまわる

・城内実(1984年) 東京大教養学部-外務省
・井上信治(1988年)東京大法学部-建設省
・上野宏史(1989年)東京大経済学部-通商産業省
・小林鷹之(1993年)東京大法学部-大蔵省
・鈴木憲和 (2000年)東京大法学部-農林水産省

 なるほど、超難関の国家公務員試験総合職(Ⅰ種、上級職)を通ってきたエリートたちである。開成神童の面目躍如といったところだ。しかし、失礼ながら、このなかでどれだけの政治家が知られているだろうか。

城内実氏 ©文藝春秋

 彼らには話題を振りまくようなハデさはない。官僚出身ゆえの地味さがついてまわる。強いて言えば、2005年の小泉純一郎政権による郵政選挙で、財務官僚だった片山さつきという刺客によって、落選の憂き目を見た城内実ぐらいだろうか。しかし、城内も返り咲いてから、その後の活躍はあまり聞こえてこない。

 それでも、国会議員になる開成神童は少しずつ増えている。国会議員の出身校は東京大がもっとも多いからだ。

「総理誕生」が開成OBの悲願

 永田町の開成OBはお仲間が増えて気をよくしたのか、2017年夏、永霞会(永田町・霞が関開成会)の設立総会を開いた。開成高校出身の国会議員・官僚が集まり、大きな話題となった。

 総会で乾杯の音頭をとったのが、内閣情報官の北村滋(1975年)である。景気づけにこう叫んだ。「岸田総理誕生が開成OBの悲願です」。

 北村滋は東京大-警察庁出身。庁内では切れ者で通っていた。北村をもっとも有名にしたのが、元TBS記者、山口敬之の準強姦疑惑である。山口は「週刊新潮」から取材を受けた際、北村にこんなメールを送り相談をもちかけたと報じられている。

「週刊新潮より質問状が来ました。■■の件です。取り急ぎ転送します」

 ■■には被害女性の名が入っている。

 前川喜平・前文部科学事務次官の出会い系バー通いを読売新聞にリークしたのも、北村と言われている。

麻布出身の前川喜平氏 ©文藝春秋

 こうした情報戦から、北村は「官邸のアイヒマン」というありがたくないあだ名を付けられてしまった。

開成のアイデンティティは「現体制を守り抜く」

武藤敏郎氏 ©文藝春秋

 官僚トップに開成出身が散見されるようになった。昨年、経済産業事務次官となった嶋田隆(1978年)も入省時から次官候補と言われ、いまや安倍政権を守るために忠誠を尽くしている。

 大物官僚として、初代財務事務次官の武藤敏郎(1962年)も忘れてはならない。頭のキレは抜群だったが、日銀総裁になり損ねてしまう。いまは、 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長。現体制を守り抜く。そこに開成のアイデンティティがうかがえる。

 開成出身の国会議員は9人、うち自民党8人、希望の党1人。間違っても共産党はいない。立憲民主党もいない。このあたりからも開成神童の堅実性、現状維持メンタリティが見てとれる。

 前出の鈴木憲和はこう話している。

「最近、麻布出身者で政権批判をする人もいますが、自分が目立ちたいだけなんだと思います。開成出身者には、そういう発想はありませんから」(「週刊現代」2017年9月16日号)

 麻布出身の前川喜平、古賀茂明のような造反官僚は絶対に生まれない。それが開成矜持と言いたいのだろうか。

忘れてはならない開成OBのドン

 開成神童の大物を忘れてはならない。渡邉恒雄である(旧制中学、1944年)。現在の肩書きは読売新聞グループ本社代表取締役主筆だが、政界フィクサーとしての存在感を示し、永田町、霞ヶ関に大きな影響力を持っている。渡邉は、開成の後輩が総理大臣になることを期待している。渡邉に地味さはつゆほども感じないが、権力欲と、体を張って体制を守る強い意志に、開成OBの水脈を見いだすことができようか。

渡邉恒雄氏 ©文藝春秋

 開成初の総理大臣が誕生したら、ハデな政策をぶち上げず、地味で堅実な政権運営がなされることだろう。

(敬称略)

(小林 哲夫)





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