自衛隊撤退後の南スーダンは、紛争の終わりが見えない「戦国時代」 – ニコニコニュース

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 昨年、国会は南スーダンに派遣されていた自衛隊PKOの問題で大きく揺れた。昨年2月にいわゆる「自衛隊日報問題」が発覚。政府は南スーダンの状況を「自衛隊が活動する首都のジュバ市内は比較的安定している」としていたが、現地に派遣されている自衛隊の日報には「戦闘」という文言があり、PKO法や憲法に反しているとの批判を浴びた。

 その後5月に突如、自衛隊の撤退を発表。7月には当時の稲田朋美防衛大臣が辞任する事態にまで発展した。

 自衛隊撤退にあわせて大手マスコミは急激に南スーダンに関する報道を縮小。自衛隊は撤退したが、南スーダンのその後はどうなったのだろうか?

 南スーダンで10年以上支援活動を行ってきた国際NGO、日本国際ボランティアセンター(JVC)の人道支援/平和構築グループマネージャー今井高樹さんに現地の状況を聞いた。今井さんは昨年12月まで南スーダンに滞在し、首都ジュバ近郊で支援活動を行って帰国したばかりだ。

◆次々と新しい武装グループが結成され、紛争が拡散

「南スーダンは現在も自衛隊派遣時と変わらず『紛争状態』にあると言えます。自衛隊撤退以降も、2005年まで続いた内戦時代以来の軍の司令官から住民の自警団が生まれるなど、次々に新しい武装グループが結成しています。正確な数は誰にもわかりません。

 反政府軍はサルバ・キール大統領の国軍と小競り合いを続けていますが、勢いを失いつつあり、かといって政府軍にそれらを一掃できる力があるわけでもありません。拡散してしまった紛争は、「紛争当事者」の数が増えたこともあって一層終わりが見えなくなっている状況です。

 昨年のクリスマス前にはいったん停戦合意が結ばれましたが、1月になってまた一部で戦闘が始まっています。さまざまな勢力が乱立している状況は、日本の『戦国時代』をイメージすると理解しやすいかもしれません」

◆南スーダン政府軍の給料未払いで兵士が強盗化

 首都ジュバでは、政府軍の兵士によると言われる強盗や略奪行為が深刻だという。兵士への給与の未払いが大きな原因と思われる。

「昨年12月に私が滞在していた時は、5か月間も払われていないと聞きました。手っ取り早くカネを稼ぐ方法として、深夜に銃を持って家々に押し入るのが常習化しています。威嚇のために撃っているのか、ジュバにいるとあちこちで銃声が聞こえます。ふっと市内での強盗が減ると、市民は『ああ、軍人に給料が払われたんだな』と思うそうです。

 地方では、軍や民兵による村々への襲撃、殺害、性暴力、誘拐、略奪が行われてきました。そうして無人化した村に、兵士や武装グループがそのまま居座るという行為も行われています。政府の高官もそれを黙認しているとの情報も聞かれます。われわれJVCが支援してきたジュバ近郊の難民キャンプでも、焼き討ちされた村から避難してきた難民が大勢いました」

◆多くの人々は、自衛隊の撤退をそれほど気にしていない

 ところで自衛隊の撤退については、現地の人々はどう受け止めているのだろうか。

「地元の人はそれほど気にしていない、というのが実感です。現地の人に自衛隊撤退の話をすると『えっ、撤退していたの?』と言われたくらいでした。現地の人はPKOに参加している部隊がどこの国の出身かなんて気にしていません。

 自衛隊もPKOのブルーヘルメットをして、小さく日の丸を出しているだけでした。隊員の外見で、現地の人からは中国軍と思われていたかもしれません。私も現地ではよく中国人に見られるので……。当然、日本が派遣しているのは『軍隊』ではなく、憲法で交戦を禁じられた『自衛隊』であるなんてことは誰も知りません。

 そもそも、PKO部隊そのものに好印象を抱いている人が少ないと思います。巨額の経費をかけてジュバに駐留して、いざという時には戦闘を止めることができなかったPKOに対しては、現地の多くの人が疑問を持っています」

◆避難民たちは苦しい生活が続き、薪拾いで糊口を凌ぐ

 昨年末、今井さんは南スーダンの首都ジュバ近郊の難民支援キャンプを訪れた。紛争により故郷を奪われた人々は苦しい生活を強いられていた。

「昨年末、ジュバ郊外のマンガテン国内避難民キャンプで支援活動を行いました。自衛隊の宿営地があった場所のすぐ近くです。キャンプには600家族以上の避難民が暮らしていました。ほとんどが女性と子どもです。JVCは昨年7月から、自炊するための鍋や、マラリアを予防するための蚊帳の配布、子どもたちには学用品の配布を行ってきました。

 キャンプでの生活状況は厳しく、国連やNGOからの支援は十分ではありません。薪拾いなどでわずかな現金を稼いで主食のトウモロコシ粉を買っています。薪拾いは、小さな束で10南スーダンポンド(日本円で約6円)くらいにしかならないのですが……。紛争が収まらなければ故郷の家に帰るめどは立たず、避難民としての暮らしが続くことになります」

◆南スーダン情勢は、日本にほとんど伝わっていない

 今井さんは南スーダン建国前からジュバで活動をしてきたが、昨年の「自衛隊日報」問題以降、急遽注目を浴びることとなった。メディアの取材がひっきりなしになり、衆議院予算委員会に参考人招致もされた。しかし日本は自衛隊の撤退以降、急激に南スーダンへの興味を失いつつある。

「自衛隊の撤退を決めたとき、政府は『南スーダンの国造りが新たな段階に入りつつある』ことも理由に挙げていましたが、『新たな段階』とは何だったのでしょうか? 南スーダンの状況は、その後もよくなっていません。石油の輸出がほぼ止まっており、事実上経済破綻しています。年率数百パーセントのインフレが起こり、国民の半数が食糧危機にあると言われています。

 南スーダンは昨年大きくメディアで取り上げられましたが、注目されていたのは自衛隊の日報や、稲田さん(元防衛大臣)のことであり、南スーダンの惨状がきちんと報道されたとは思えません。現地の状況を取材した日本のメディアは非常に限られていました。とても内向きだと感じます」

◆日本政府は、日本人NGOスタッフの現地渡航を禁じている

 今井さんはこう続ける。

「そもそも、日本政府はマスコミに対して『南スーダンは危険地だから入るな』との圧力をかけていたとも聞きました。NGOに対しても、政府の助成金を受けて南スーダンで活動をしている団体に対しては、日本人スタッフの現地への渡航を禁じています。世界最悪レベルの人道危機が起きているのに、日本人が渡航できず、現地で起きていることが日本に伝わりにくくなっています。

 JVCは、政府からの助成は受けず一般の方々のご寄付によって南スーダンで活動しています。だからこそ、私が入国して現地の様子をその目で見ながら必要な支援を行うことができるのです。これからも皆さんの支援を支えに、現地の人びとの声を日本の皆さんに伝え続けようと思っています」

取材・文/白川愚童 写真/日本国際ボランティアセンター(JVC)



マンガテン難民キャンプで子どもたちから状況の聞き取りを行う今井さん



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