南海トラフ地震:津波避難6割発令検討 139市町村調査

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南海トラフ巨大地震の想定震源域



 南海トラフ地震の津波で大きな被害が予想される139市町村に毎日新聞がアンケートを実施したところ、地震発生の可能性が高まったとする臨時情報を政府が発表した場合、6割超の91市町村が避難勧告などの発令を検討すると回答した。臨時情報は予知と違って確度が低く、国は現状では避難の呼びかけまでは求めていない。だが、多くの自治体は、住民生活に影響が出ても安全を最優先とせざるを得ないと考えていることが明らかになった。

 アンケートは、気象庁が昨年11月から「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を始めたことを受け、津波避難対策を強く求められている1都13県の139市町村に実施。臨時情報への対応やその理由などを尋ね、全市町村が回答した。

 避難勧告などの発令については、「検討する」91▽「検討しない」48だった。検討する自治体のうち、40市町村が状況次第で避難勧告や避難指示の発令も選択肢に入れるとする一方、30市町は「避難準備・高齢者等避難開始」にとどめる対応を視野に入れている。残る21市町村は具体的な発令内容の回答がなかった。

 南海トラフ地震は東海、東南海などの震源域があり、それぞれマグニチュード(M)8級、連動すると最大M9の地震が懸念される。臨時情報は主に(1)想定震源域内でM7級以上の地震(2)東海地方で異常な地殻変動--の場合に発表される。

 「検討する」と答えた市町村のうち、(1)では35市町村が避難指示か避難勧告の発令を検討すると答え、(2)は8市町村にとどまった。

 「検討しない」とした市町村に理由を尋ねると、住民生活の混乱を懸念する声(30市町村)が最も多かった。「避難勧告を出すほど確度の高い情報ではない」(神奈川県茅ケ崎市)という趣旨の意見も目立った。

 「検討する」とした市町村は「津波到達まで数分と想定され、何もしないわけにはいかない」(静岡県伊豆市)などと切迫した事情を抱えるが、勧告を発令できる期間は「3日程度」の回答が多く、長期の避難呼びかけは難しそうだ。

 政府は臨時情報への対応を示したガイドラインを策定する予定。ただ、策定時期のめどは立っておらず、市町村から作業を急ぐよう求める声が高まっている。【池田知広、大久保昂】

「空振り」懸念で迷いも

 毎日新聞が実施した「南海トラフ地震に関連する情報」のアンケートでは、臨時情報が出た場合に避難勧告などの事前発令を検討する自治体が多数派を占めた。ただ、「検討しない」と明確に答える市町村も3分の1以上に達しており、回答は割れた印象だ。「検討する」の中にも、具体的な対応方法を示すことは困難だとする回答が少なくなかった。市町村としては、住民の生命を最優先に対応したい。しかし、発令が長引けば、避難所の運営に負担がかかる上に、住民の健康を害する恐れも出てくる。調査結果からは、こうした迷いや苦悩が読み取れる。

 臨時情報は大きな地震や地殻変動といった前兆とみられる現象をとらえて発表するが、精度は低い。気象庁も認めているように、世界の地震記録から単純計算すると、前兆の可能性がある地震がマグニチュード(M)7級の場合、1週間以内に同規模以上の大地震に見舞われる確率は2%程度だ。前兆現象が地殻変動のケースだと、大地震の発生確率を示すことすら難しい。臨時情報が「空振り」に終わる可能性が小さくないだけに、市町村としてはなおさら悩ましい。

 臨時情報への対応に、「正解」と言えるものはない。情報そのものの不確かさに加え、地形や要支援者の人数、津波到達までの最短時間などは自治体ごとに異なるからだ。ただ、被害の軽減効果と、経済や住民生活への打撃をてんびんにかけ、ある程度の方針は決めておく必要がある。津波に襲われる沿岸部だけでなく、揺れによる被害が予想される地域にも求められる難しい課題だ。【池田知広】

 【ことば】南海トラフ地震に関連する情報

 南海トラフ地震が起きる可能性について、気象庁が専門家の議論に基づいて発表する。月ごとの「定例」と、平時と比べて可能性が高まった時などに出す緊急的な「臨時」の2種類がある。政府は東海地震を事前予知して警戒宣言を出す体制を40年近く続けてきたが、確実性の高い予知は困難として断念し、それに代わる確度の低い情報として導入した。






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