東浩紀「日本における女性の地位の低さは異様」

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東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン代表。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。

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去る11月22日、熊本市議会で緒方夕佳議員が生後7カ月の長男とともに出席を試みた。出席は認められず、最終的に長男は退場を迫られた。是非をめぐり議論が沸騰している。

ネットを見るかぎり、子連れ参加賛成派と反対派は拮抗(きっこう)しているようだ。欧米は子連れOKだと説く賛成派に対し、反対派は欧米になんでもあわせればいいのかと噛みついている。問題提起の方法に疑問を呈する向きもあるようだ。

しかし本当の問題はそこにはない。重要なのは、そもそも日本では女性議員の割合が異様に低いということである。日本の地方議会における女性の割合は、2016年の時点で都道府県議会が約10%、市区町村議会平均で約13%にとどまっている。この割合が異常なことはあきらかだ。地方議員の国際比較統計は存在しないが、日本の国会の女性議員比率は9%強(16年)。これは世界平均の約23%を大きく下回り、193カ国中163位だ。むろん中国や韓国よりも低い。欧米がどうという問題ではないのだ。

ぼくたちはこの状況を恥じなければならない。高齢化が進むなか、若い世代の政治参加も求められている。子育てが若い女性の政治参加を妨げるなら、ただちに対策を取るべきだ。議員の声を封じてはならない。

それにしても、日本における女性の地位の低さは一種異様なものがある。先日、世界経済フォーラムが発表したジェンダー格差指数では、日本は144カ国中114位だ。たいへん深刻な数字だが、より深刻なのは、多くの日本人がこれを問題だと感じていないことである。数字ではたしかに低い、でも数に表れないところでは日本の女性は活躍している、と男女ともに思っているふしがある。

私見では、その背景には日本独特の文化環境がある。日本の大衆文化では女性の存在がきわめて大きい。政治家が女性アイドルのファンであることを公言し、広告会社はつねに女性消費者を気にしている。けれどその状況が逆に人々の目を眩(くら)ませているところはないか。女性的感性を文化的に愛めでることと、現実の女性を政治的に包摂することはまったく違う。両者を混同してはならないのである。

※AERA 2017年12月11日号





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