<2017奈良市長選・下>財政の改善 不可欠 – 読売新聞

Home » 市区町村長選 » <2017奈良市長選・下>財政の改善 不可欠 – 読売新聞
市区町村長選 コメントはまだありません



 寺院を思わせる屋根や、落ち着いた趣の板壁。唐招提寺近くの奈良市四条大路にあった和風建築の旧都跡みあと村役場と議事堂が姿を消したのは、3年前のことだ。

 1933年(昭和8年)に建てられた村役場と議事堂は、40年に村が奈良市へ編入合併後も、市の連絡所や公民館の分館として利用。県教委が2011年にまとめた調査報告書では「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」と評価されたが、14年冬、老朽化を理由に解体された。跡地に2年前に完成した「都跡地域ふれあい会館」の玄関脇には、「都跡村役場跡」と刻まれた石柱がひっそりとたたずむ。

 同会館の整備費は約7400万円。旧村役場と議事堂を残すには大規模な耐震化工事が必要で、市の試算では約2倍かかるとされた。都跡地区自治連合会長の藤田正博さん(70)は「市の財政難を考えるとやむを得なかったが、80年以上あった村役場がなくなり、寂しく感じる人もいた」と、複雑な思いを吐露する。

 市の財政の厳しさを示すデータは枚挙にいとまがない。深刻なのが、15年度末現在で2825億円という巨額の借金(市債残高)だ。

 市民1人あたり58万9000円の借金。市の財政規模に対する借金の大きさを示した「将来負担比率」は171・5%。ともに全国の中核市で最も悪い。

 財源に対し、人件費や公債費(借金の返済)などの義務的経費が占める割合「経常収支比率」は、通常80%を超えると厳しいとされるが、市は97%。柔軟に使える資金はほとんどなく、全国1741市区町村中、1693位(いずれも15年度末現在)に沈む。

 なぜこれほど市の財政は厳しいのか。

 市によると、多額の負債を抱えていた市土地開発公社を12年度に解散し、その負債173億円を丸々背負った影響が大きいという。

 さらに280億円以上を投じて1999年にオープンしたJR奈良駅前の「なら100年会館」など、過去の大型公共工事が残した借金も負担となっている。同会館だけで「利息も含め毎年7億~8億円」(市財政課)を返済しており、今後も10年以上続く見通しだ。

 返済に充てる財源も心細い。15年度の市税収入は約517億円。ピークだった1996年度の約620億円から100億円以上減った。大手企業の工場などの進出はなく、大型商業施設も隣接する大和郡山市や京都府木津川市に流れ、法人市民税は伸び悩む。

 市財政課は「業務の民間委託を進めて職員を減らし、人件費の削減を図っても、高齢化で社会保障費が増え、借金返済は続く。いたちごっこだ」と、やりくりに頭を悩ませる。

 古都の風情や文化を守りつつ、魅力ある街づくりを進めるには、柔軟でゆとりのある財政への転換が欠かせない。地道に借金を減らし、未来につながる種をまく施策や知恵が求められている。(近藤修史)





コメントを残す