[連載]観光立国のフロントランナーたち 三重県 鈴木英敬知事(最終回) – JAPAN style 訪日ビジネスアイ

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2017/04/04



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ジャパンインバウンドソリューションズ(JIS)の中村好明社長が、日本の観光立国実現に奔走するキーマンたちと、その道筋について語り合う大型対談「訪日ビジネス最前線 観光立国のフロンティアたち」。2016年の伊勢志摩サミットの舞台となった三重県の鈴木英敬知事を招いた対談の最終回では、三重県の今後のインバウンド戦略に話が及びました。今年4月には第27回全国菓子大博覧会(お伊勢さん菓子博2017)を開催するほか、伊勢志摩国立公園をベースにしたインバウンド誘致にも取り組みます.観光資産の多い三重県のポテンシャルを感じる内容です。

菓子博を通じて、三重の特産をPR


中村  今回は三重県の未来のお話を中心にうかがいます。4月21日から5月14日まで「お伊勢さん菓子博2017」が伊勢市で開催されますが、訪日外国人を含む多くの観光客の来県を期待されていると思います。まずは2017年度から、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年に向けた三重県の観光戦略、インバウンド戦略についてお聞きかせください。


鈴木知事 2017年度の大きな観光的なイベントとして菓子博がありますが、これは、4年に1度のイベントです。実は今回、ちょっと面白い企画があるんです。歌川広重の浮世絵に「伊勢参宮宮川の渡し」というのがあります。宮川渡しというのは、江戸時代、お伊勢参りをする際に必ず通るところで、その賑わいを描いたものです。その浮世絵を横10メートル、奥行き5.5メートルの巨大工芸菓子にするんです。


全国菓子大博覧会 お菓子の祭典として全国の菓子店が組織する全国菓子工業組合連合会(事務局・東京都港区)の主催で、4年に1度開催されている。第1回は明治44年に開催された帝国菓子飴大品評会で、以降、戦争による一時中断があったものの、1世紀にわたり開催を重ねてきた。会場では全国からお菓子が集められ展示・即売されるほか、菓匠が作られた工芸菓子が披露される。


三重県は「あおさ」が名物ですが、大手の菓子メーカー社があおさ味の限定品のお菓子を作ってくれることになっています。また、伊勢と言えば、赤福ですが、300年で初めて白福じゃないですけど、白い赤福を今回会場で提供してくれるんです。


僕の思いとしては菓子博で、たくさんの人に来てほしいのはもちろんですが、広島で4年前に開催した時には生産日本一のレモンを使ったお菓子がいっぱい登場したんです。もみじ饅頭も売れていましたが、レモンのお土産もすごく売れていたそうなんです。


そこで三重県は、「伊勢茶」「あおさ」「柑橘(かんきつ)類」の3つで次のスターを生み出そうと考えてます。今までの菓子博ではあんまりなかったことなんですが、今回高校生たちが考えたレシピによるお菓子が5点商品化されます。


また、実は三重県はパティシエの資格である製菓衛生士の人口10万人当たりの免許の交付数が全国で2番目に多いんです。パティシエの人材育成の場所、お菓子作りの人づくりの場所、ということを若い人たちにもっと知ってもらいたいんです。「お菓子のことを学ぶなら三重県」というようなことを定着させたい。これって地方創生にもつながると思うんですよね。定住人口や交流人口の増加にもつながりますから、菓子博だけを成功させるのではなく、次なるスターを生むとか、次の人材作りをするとか。そういったきっかけにしていきたいと考えています。


中村  これも「レガシー」ですね。菓子博そのものというより同じく菓子博のレガシーを明確な意図をもって進めていくということをお考えなのですね。
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四日市港を大型クルーズ船が停泊できる港に


鈴木知事 また、国立公園満喫プロジェクトに伊勢志摩国立公園が指定され、16年から5年間を期間とするステップアッププログラムを策定しました。それを実行する「ビューポイント」を21カ所設けて、「天空カフェ」を作ったり、案内を多言語で表示したり、アクセス道路を整備したり、景観を保護したりといったことに取り組んで、伊勢志摩国立公園の自然をインバウンド誘致の目玉にしていきます。


また、これまで三重県には国内で運行するクルーズ船は来航していますが、海外のダイヤモンドプリンセス級の大型クルーズ船が停泊できる港がありませんでした。四日市港の管理者は私なんですが、四日市港を大型クルーズ船が停泊できるように整備をし、インバウンドの新しい窓口にしたいですね。海外の大型豪華客船に来てもらって、そこからなばなの里や伊賀の忍者、伊勢神宮などに足を運んでもらいたいです。できれば、四日市港が中部の大型客船の窓口にしたい。これは今年度、力を入れていこうと思っています。


加えて、バリアフリーは重要な観光戦略です。「伊勢志摩バリアフリーツアーズ」というNPO(非営利団体)があります。国連の世界観光機関(UNWTO)の事務局長が日本に来た時にも講演で話題にされていましたし、UNWTOの冊子にも載っています。もともとは伊勢神宮を車いすでも行けるようにしようという取り組みを進めている団体で、県もずっと支援しています。


私が知事になって2013年に日本一のバリアフリー観光県推進宣言を出し、その翌年度に「みえバリ」という観光ガイドをつくりました。障害を持っている方々が行けるところだけを行くのではなくて、行きたいところに行くためにはどうすればいいのかという視点で約120カ所の観光スポットを紹介しています。実は海外では、障害を持っている方が日本よりも積極的に旅行をされています。日本でも高齢で足が悪い方々でもいろいろなところに行ってもらえるような観光にする。今後の観光需要の拡大という意味でも大変重要なことなのではなでしょうか。そんな物理的なバリアフリーだけでなく、心のバリアフリーのようなこともぜひ取り組みたいと思っています。


訪日客誘致は台湾を重視、国際交流を強化


中村  インバウンド需要の中で、特にターゲットにしている国というのはあるのでしょうか。


鈴木知事 アジアでは主に台湾と香港とタイ、マレーシアを一つのターゲットとしながらプロモーションをしています。特に台湾なのですが、2012年に当時の三重県知事が初めて台湾を訪問し、2013年には日台観光サミットを三重県で開催しました。2018年はちょうど5年の節目となります。


台北はだいたい自治体が交流していて飽和状態になっていますので、三重県は2016年1月に高雄と産業連携などの国際交流の覚書を締結し、高雄の日本台湾交流協会に自治体としては初めて三重県職員を常駐させています。台湾新幹線の左営駅と高雄空港の間に鈴鹿サーキットパークという鈴鹿サーキットの10分の1のコースができました。そういうこともあって、台湾南部を攻めています。今年2月に私が台湾を訪問したとき、台湾の中で最も平均所得の高い市といわれている台中市とも国際交流の覚書を締結し、中部市場にもターゲットを広げています。


中村  要するにやみくもなプロモーションという事ではなく、明確なビジョンをもって、ターゲットの絞り込みを行っているということですね。


鈴木知事 そうなんです。三重県は地域内でお金を使ってもらうことが基本なので、観光に関しては、入り込み客数を目標にしていません。観光消費額と延べ宿泊者数、インバウンドとリピート移行率を目標に掲げています。


例えば、アジアで韓国から500万人が来日していますが、消費額はあまり高くないんです。台湾は韓国より来日客は少ないのですが、韓国の1.5倍も消費しています。香港は来県者数が韓国の3分の1程度ですが、韓国とほぼ同じくらい消費しているんです。中国の方々は旅行消費、買い物代が極めて高く、ベトナムは飲食費が非常に高い。こうした消費額の高い国・地域を効率よく攻めていきます。欧米ではフランスを中心に攻めています。インバウンドは重点国をしっかり決めながら、個人旅行客(FIT)を誘客する戦略です。


中村  三重県の取り組みとして私の方から一つ提案したいのですが、三重県の各地の街並みには、幾重にも重なった歴史があり、堆積しています。これは貴重な観光資産です。何もしないとどんどん現代化していきますが、文化的景観が消えていくのは残念だと思います。海外から個人旅行客が訪れる時代になって、地元こだわりの古民家レストランや町屋レストランは誘客のポイントになると思います。そこをぜひ研究していただきたい。松阪や東海道の関宿など以外にも研究していただくと、他の自治体がうらやむような隠れた宝がたくさんあるのではないかと思います。


鈴木知事 おっしゃるとおりですね。関もそうですし、明和町の斎宮周辺もそうです。明治天皇が初めて伊勢神宮にご参拝に来られたときに船を降りた河崎という場所があるんですが、伊勢商人の町で、今も昔からの蔵がいっぱいあるんです。そういうことに県民がもっと意識を持てるようにしたいですね。


中村 もう一つは先ほどバリアフリーの話をされましたが、ムスリムフレンドリーであったり、LGBTであったり、いろいろな角度からのバリアを取り除くということも大事だと思います。インバウンドの視点でいえば、スピリチュアル・ツーリズムというものが注目されます。ムスリムの方は、信仰心が厚い分、日本人が祈りを捧げるスピリチュアルなものに興味があるんです。宗教を越えた共通するものがあるのだと思います。さまざまなマイノリティの方々に対するおもてなしは最終的には迎える側も旅人側の生活の質を高められます。日本中の神様の原点である三重県の可能性を感じます。


鈴木知事 いろいろな人たちの多様性を受け入れられるツーリズムはわれわれもぜひ取り組んでいかないといけない。勉強しながらやっていきたいですね。こういう時代だからこそ、いろいろな価値を受け入れあっていくということができれば、遠回りかもしれないですけど平和につながっていくということですね。(おわり)



鈴木英敬(すずき・えいけい) 1974年生まれ。東大経済学部卒業後、98年通商産業省(現経済産業省)入庁。2009年三重2区から衆議院選挙に立候補するも落選。2011年4月三重県知事に就任。2015年4月に再選し、現在2期目(現在も現役最年少知事)。内閣府少子化危機突破タスクフォース構成員、全国知事会危機管理・防災特別委員会委員長などに就任。家族はシンクロナイズドスイミング五輪メダリストの妻・武田美保と一男一女。



中村好明(なかむら・よしあき) 1963年生まれ。ドン・キホーテ入社後、分社独立し現職就任。自社グループの他、公共・民間のインバウンド振興支援事業に従事。2017年4月、一般社団法人日本インバウンド連合会に理事長に就任。日本インバウンド教育協会理事。ハリウッド大学院大学および神戸山手大学客員教授。日本ホスピタリティ推進協会理事・グローバル戦略委員長。全国免税店協会副会長。みんなの外国語検定協会理事。観光政策研究会会長。一般社団法人国際観光文化推進機構理事。著書に『ドン・キホーテ流 観光立国への挑戦』(メディア総合研究所、2013 年)、『インバウンド戦略』(時事通信社、2014 年)、『接客現場の英会話 もうかるイングリッシュ』(朝日出版社、2015 年)、『観光立国革命』(カナリアコミュニケーション、2015 年)、『地方創生を可能にする まちづくり×インバウンド 「成功する7つの力」』(朝日出版社、2016年)がある。









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