カジノ法案 再考の府も審議放棄か – 毎日新聞

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 これでは暴走に等しい。

 カジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)整備推進法案」(カジノ法案)が参院で審議入りした。自民党は週内にも成立を図ろうとしている。

 カジノの合法化に多くの懸念が指摘されているのにもかかわらず、まともな審議もせず法案は衆院を通過した。「再考の府」である参院までもが審議を省略するあしき前例を残してはならない。

 各会派による合意を原則とする議員立法の法案なのに、衆院内閣委員会の審議はわずか約6時間だった。

 中身もお粗末だった。ギャンブル依存症対策などへの具体的対応について、提案者側は施行後に政府がまとめる実施法案に委ねられるという趣旨の答弁を繰り返した。

 質問に立った自民党議員は「時間が余った」と直接関係ない話題に持ち時間を費やし、般若心経を唱えた。信じがたい光景である。

 自民党が成立を急ぐ背景には安倍晋三首相ら官邸側の意向があるとみられている。首相はシンガポールでカジノを含む施設を視察し「IRは(外国人観光客を呼び込む)成長戦略の目玉になる」と語っている。

 確かに経済界や地方の一部にはカジノを含むIR構想への期待がある。大阪府・市は大阪湾の人工島での整備を想定し、横浜市なども誘致に乗り出している。

 だが、各国の競争激化などで経営が失敗、悪化したり、アジアでも減収傾向が指摘されたりしている。本当に海外から客を呼び込めるか、綿密な分析が必要だろう。成長戦略が手詰まりだからといって、負の側面に目をつむったままカジノを含む施設を頼みにするようでは問題だ。

 従来のIR推進論はおおむねカジノの負の側面を認め、その払拭(ふっしょく)に努めることで世論の理解を得ようとしていた。今回のような進め方はこうした積み重ねにも逆行する。

 自民党と日本維新の会がIRを推進する中、慎重だった公明党はあっさり自主投票を決め、衆院通過を事実上容認した。衆院では維新が選挙で強い影響力を持つ大阪選出の公明党議員は全員賛成した。参院本会議で同党は質問も見送った。これでは足元をみられるばかりではないか。

 参院で法案を実質審議する内閣委員会は民進党議員が委員長を務める。自民党には委員会採決を経ず本会議で成立させたり、委員長を解任して可決を強行したりする案すら浮上しているという。

 こうした性急さに参院自民党からも疑問の声が起きているのは当然だろう。禍根を残さないためにも参院は法案を徹底審議し、責任を果たすべきだ。






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